EXHBITION

中島潔画業50周年 一瞬間の”煌めき”令和の心を女性に描く

 
特別企画にて、作品「ミントゥチカムイ」を展示していただきます
 
■安曇野市豊科近代美術館

■2023年5月2日(火)~6月11日(日)

■月曜休館

■9時~17時(最終入館16時半)
 

作品「ミントゥチカムイ」について

「ミントゥチ」とはアイヌにつたわる河童のような存在です。
本州では川に流された人形が河童になったとされる説が主流だそうですが、その河童が北海道に伝わり、アイヌ民によってカムイとしてアレンジされ「ミントゥチ」が誕生したのだとか。
 
今回の作品では少女の姿のミントゥチを描きました。
アイヌ民族のカムイの概念と融合した河童には、頭上の謎のお皿がありません。
お皿のかわりに大きなリボンをつけてみました。(かわいいでしょ^^)
そのミントゥチが、川岸に座り込んでなにやら物思いにふけりながら、ちぎり取られたようなもう片方の手首を持っている場面です。
 
 
 
わたしが生まれ育った北海道には石狩川という大きな川が流れています。
子どもの頃には大雨で川が氾濫し、水害による混乱を経験したことがあります。
 
水害のことは、まぁこれくらいでいいでしょう。
そんなことより、「三日月湖」が実家のすぐ裏手にありました。
三日月湖とはその昔、大蛇のように大きく曲がりくねった川をまっすぐにしたときの名残なのだそうです。その小さな湖(沼かな?)は子どもたちの遊び場でした。
 
小学校低学年くらいのある日。
いつも一緒に遊んでいた近所のお友達がその日はいなくて、退屈だったので、一人で三日月湖へ遊びに行きました。そして近くの木に登って遊んでいたら、はずみで水の中に落ちたんです。着水する刹那、子どもながらに「え、ここで終わり?」と思ったのをはっきり覚えています。だいぶ焦りましたね。
 
幸い岸に近く、流れのない場所だったので、こともなく自力で這いあがりました。ずぶ濡れで淡々と家へ戻り、家族に目撃されないようこっそり服を着替え、靴もすぐに水道水で洗い流しました。家族には内緒です。もう行くなと言われそうでしたからね。
これが自分にとって最もつよく印象に残る水についての思い出。
災厄はいつどこでどのように降りかかるかわからないものですね。
 
片方の手を人間に預けた河童のお話が日本各地に数多く残されています。
人や馬を川に引きずり込む悪さをしようとした河童が捕らえられ手を切り取られる。・・・という感じの、まぁまぁショッキングないきさつを経て人間の手に渡ってしまった(奪われた?)その手を、親切に返してもらうと河童はお礼としてその地に恩恵をもたらす、という恩返しパターンのお話が多いようです。
 
いろいろな教訓が込められているのだと思いますが、自然をもっと身近に感じていた時代では、コントロールできないものと共存するためにそういった物語や戒めのようなものが不可欠だったのだろうと思います。
今回はミントゥチにいろいろな思いや願いを込めて描いてみました。
 
 
また、もうひとつ。
手が「ぶちっ」とちぎれています。4コマギャグマンガのようなちぎられ方ですね。
なぜかって?わかりません。
 
ただ、自分の好きな絵画作品に「慧可断臂図」というのがあります。有名な禅画(国宝)ですから、誰でも一度は見たことがあると思います。
 
静かな空気感なのに、とにかく衝撃的です。
見るたびに「こんなことある??」と毎回ツッコまずにはいられない名作。弟子志願にやって来た慧可が達磨に受け入れてもらえず、思い通りにならないからといって自分の肘から下を切り取り差し出すという暴挙・・・いやかなりヤバめの強迫行為。達磨はやっぱりあっち向いたまま「そこまでの覚悟を見せるのならその決意、受け止めよう」となる。いや、ならないでしょう?どっちもおかしいでしょ?だいじょうぶそ?
 
覚悟とは?厳しさとは?教えとは?謎だらけの名作です。
理解できる要素があまりにも無さ過ぎてむしろずっと見ていられる名作。わからないから見ていたいという魅力。こういうの、好きなんだと思います自分。
 
 
そういうわけでこの「ミントゥチカムイ」も、一体何があってそういう展開に?このあとミントゥチどうなるの?などと想像をふくらませながら味わっていただけるといいかと思います。
 
 
豊科近代美術館のあとも、来年まで各地にて巡回展が開催される予定です。
ぜひお出かけくださいね。
 

◆ 安曇野市豊科近代美術館
2023年5月2日(火)〜6月11日(日)

◆ 福井市美術館
2023年9月16日(土)〜11月5日(日)

◆ 酒田市美術館
2023年11月18日(土)〜2024年1月21日(日)